アーツ前橋『岡本太郎と今日の芸術』
茶人を目指す。窓辺亭主ミワコです。
地元に帰ったら行こうと思っていた展覧会。
されど失礼ながらこんなに素晴らしい企画展とは思ってなかったです。ごめんちゃい。
岡本太郎と言えば何を浮かべるだろうか。
世代によって色々だとは思うけど、「芸術は爆発だ!」と叫んだりする変わったおじさん、大阪万博の「太陽の塔」とかの摩訶不思議な前衛的な芸術家と言ったイメージ?
ま、きれいな芸術作品から程遠いかな。
私は小学生の頃に何故か蕎麦屋でたくさん岡本太郎の作品(コピーかな)が飾ってあって、どぎつい色と目玉とか腕とか不思議なモチーフに怖いと思った記憶が一番古いかも。
東京に出てから街角にあるオブジェや岡本太郎美術館など触れるにつれて、その圧倒的なパワーに興味をそそられた。
一番の衝撃は渋谷駅に『明日の神話』という大きな作品が展示されたことだった。ピカソの『ゲルニカ』と対になるような戦争や核の人間の愚かしさ罪を描いた絵。
さらに、その作品がいつでも無料で観れるということにもビックリした。
アーツ前橋開館5周年記念企画展 岡本太郎と『今日の芸術』 | デザイン・アートの展覧会 & イベント情報 | JDN
さて、今回の展覧会は太郎さんが1955年に発表したベストセラー『今日の芸術』をテーマにした展示と、彼に影響を受けたその後の芸術が紹介されている。
まず驚きは太郎さんが明治生まれということ(笑)
そこかいと突っ込まれそうだけど、正直なところそんな昔の人というイメージが皆無なのだもの。
次の驚きは、この本の文章が実に論理的でいて、平易で分かりやすいこと。芸術書って大概難しいじゃあないですか。この本は全然そんなことがなくて、誰が読んでも頭に入ってくるような文章。
芸術って何なのか、なんで必要なのかと思う人ってたくさんいると思うのです。
美術の授業って必要なのとか、美術館って必要なのとか。現代アートってわけわからんのだけどとか、そんな疑問に対するアンサーがやさしく書かれています。
そして、これまでは富裕層だけに占有されていた芸術は一般市民なものなのだということを言及しています。
アフリカンアートや縄文、日本の無くなりつつある祭祀や風習に目を向けていること、小学生の作品も同時に展示されています。
芸術は我々の生活のなかにこそあるんだ、難しいものではないのだということが訴えられています。
芸術は我々が作るものなんだとも。
今日の芸術―時代を創造するものは誰か (光文社知恵の森文庫)
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太郎さんの作品は訳が分からんという人も多いかもしれない。
是非、目の前でホンモノを見て欲しいです。
何が書いてあるかは考えずに絵からモチーフから湧き出るパワーと感情を受け取って欲しいです。
それを感じる気持ちが芸術の一部なんじゃないのかなと思います。
太郎さんも第二次世界大戦にも従軍して、あの酷い自由のない時代の辛酸を舐めてきた。
だからこそなのかもしれないけれど、言論の自由が許された戦後、皆んなが自己を表現することの必要性を絵画やオブジェや著書、日用品やノベルティー、メディアを使ってまでも訴えた。
これは凄いことだよね。
なんというか、最近ようやく太郎さんに我々が追いついてきたくらいに思えて仕方ないのです。
その後に太郎さんの思想に影響を受けた芸術家の作品が並ぶ。
これからは我々に託されてるのだよ。
そんなメッセージが込められた展覧会のように思った。
明日、1月7日は太郎さんの命日。
太っ腹なことに入場無料とのことなので行かれてはどうでしょう。
私は『今日の芸術』をちゃんと読んでみようかな。
ではまた。